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眼内レンズの種類と特徴とは?

眼内レンズの種類と特徴とは?

眼内レンズとは

 

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、その水晶体の代わりとなる小さな人工レンズを眼内に挿入します。このレンズは、直径6〜7ミリほどです。特殊なレンズでは4.5ミリほどの大きさになります。これが「眼内レンズ」です。

 

眼内レンズの種類

 

眼内レンズには、大きく分けると単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類があります。この2つは、ピントが合う数が異なります。単焦点レンズは1カ所にピントが合うレンズで、多焦点眼内レンズは遠距離と近距離など、複数の場所にピントが合う、遠近両用の眼内レンズです。

 

眼内レンズの種類

 

A.  単焦点眼内レンズ

B.  多焦点眼内レンズ:2焦点、3焦点、焦点深度拡張型(EDOF)

 

A.  単焦点眼内レンズ

 

単焦点眼内レンズのレンズ部分は、なめらかな曲線になっており、1か所にピントが合うようにできています。単焦点眼内レンズのメリットは、まず基本的に像がシャープではっきり見えます。元々レンズは1か所に光を集中させていて、レンズを通ることで起こる収差(ズレ)などいろんな問題がありますが、単焦点眼内レンズの方が収差もなくて、はっきりと像が見える。

 

単焦点の見え方

※単焦点の場合の見え方

 

もう一つのメリットは、ほとんどの単焦点眼内レンズには健康保険が適用されるので、経済的には大きなメリットがあります。

 

デメリットは焦点の合う範囲が狭いことです。遠くを見たり、近くを見たり、全部を見ることは不可能ですが、眼鏡さえかければ単焦点眼内レンズでも遠くから近くまで見えるようになります。視力が落ちる前の老眼が強かった時代に戻るようなものです。ただし、眼鏡を購入する必要があります。

 

B.  多焦点眼内レンズとEDOFレンズ

 

遠近両用と言えば2焦点しか合わないと思われがちですが、中間距離にもピントが合うレンズもあります。今では3焦点が主流になってきています。また、多焦点眼内レンズにはEDOFレンズと言って、焦点が広がったようなタイプがあります。

 

2焦点の見え方

※2焦点の場合の見え方

3焦点の見え方

※3焦点の場合の見え方

 

多焦点眼内レンズは、レンズ部分が波のように厚くなったり、薄くなったりしており、ギザギザしています。そのギザギザした部分に光が当たることによって、遠くや近くにピントを合わせることができます。EDOFレンズも他の多焦点眼内レンズのように表面がギザギザしていますが、焦点距離が伸びるように作られています。

 

例えば、3焦点眼内レンズは、3つの焦点の間にレンジ(幅)があるので、そのレンジが少し繋がってほぼ全体が見えるため、遠くから近くまでがほぼ見える。2焦点眼内レンズは遠くと近くは見えるけど、中間が少し見えにくくなります。

 

EDOFレンズは焦点が伸びるように設計されているので、遠くから中間、もう少し近くまで見えます。ただし、見える範囲を広げるには限界があるので、手元の細かい字は見づらくなります。

 

万能に見える多焦点眼内レンズのデメリット

 

多焦点というのは2焦点・3焦点と、焦点を分けているので、見え方の質が低下します。具体的には、コントラスト感度が低下します。例えば、白と黒がはっきりしているのが100%のコントラストの状態です。コントラスト感度が低くなると、色の濃淡が薄くなります。例えば、視力は1.5あっても、薄い字で書かれていたら文字が見えにくくなります。それが見え方の質が落ちるということです。

 

EDOFレンズの方が質が落ちにくいですが、それでもピントが1点に合うところを引き伸ばすわけですから、見え方の質はやはり多少落ちます。

 

また、多焦点眼内レンズは、特に夜間ではハローやグレアと言って、光の前にかかる輪(ハロー)のようなものや、光のぎらつき(グレア)などが気になるようになります。比較的近くは見えにくいけれど、EDOFレンズの方がハローやグレアに関しては、多焦点眼内レンズよりは良いということが言えます。

 

ハロー・グレアの見え方

※ハロー・グレア

 

注意すべき点は、多焦点眼内レンズの場合は眼の中の光の機能を落として焦点の質を落としているので、眼の病気がある人には向いていません。

 

また、多焦点眼内レンズは保険適応になる単焦点レンズに比べると費用が掛かります。保険適応の2焦点眼内レンズが出てきたのですが、そのレンズはいわゆるEDOFと同じように遠くと中間距離は見えますが、近くが見えません。見える質も落ちるので、主治医とよく相談して決めるということが大事ですね。

 

どんなレンズを選ぶべきか

 

実際に生活しているなかで眼鏡を掛けてもいいか、掛けたくないかで大きく異なります。一般的には、車を運転する人で、眼鏡を掛けたくない人は多焦点眼内レンズ、見え方の質を選ぶなら単焦点眼内レンズを選択します。その中間で、ある程度眼鏡を掛けずに済ませて、どうしてもという時だけ眼鏡を掛けるなら、EDOFレンズが良いということになります。

 

ですが、車を運転せず、家で生活することが多い人の場合は、足元が見える距離やテレビの距離に合わせる。そうすると家で料理ができるぐらいの距離までは単焦点眼内レンズで眼鏡なしでも生活できる場合もあります。

 

単焦点眼内レンズであっても多焦点眼内レンズであっても、どんなにいいレンズを入れても、どの度数に合わせるかがとても重要です。眼鏡を使う頻度をどこまで減らすかということも、その度数によって変わってくるのです。

 

これから先を見据えて

 

ご自分の現在の生活や、それから先も、自分がもっと年を取ったら環境が全く変わってしまいます。例えば70歳で手術をしたあと、90歳まで生きたとして、同じように立って歩いているか、介護施設に入っているかも知れないですね。100歳の前に家で寝たきりになるかもしれない。年を取ってからの環境は大きく変わるので、その辺りも含めてどう選ぶかを考えてみるといいと思います。

 

例えば、将来、老人ホームなどの介護施設に入ったとき、食事の時やテレビを見る時に眼鏡なしで見えるのが一番いいと思います。介護施設では、認知症のひと同士で眼鏡の取り合いになることがしばしばあります。同じ単焦点を使うにしても軽い近視にして、眼鏡なしで合わせることも一つの手です。年齢の要素もありますし、同じ人でも年齢によって変わってくるので、医師とよく相談して決めることですね。

この記事の著者

市川 一夫 医師/中京眼科視覚研究所 所長

市川 一夫 医師/中京眼科視覚研究所 所長

1978年愛知医科大学医学部卒業。1983年、社会保険中京病院(現・独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院)眼科主任部長。 そのほか、中国大連医科大学客員教授、ハルピン医科大学付属第四医院客員教授、日本白内障屈折矯正手術学会理事長(現監事)などを務める。著書に「放っておくと失明する怖い目の病気」など。

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