【白内障と近視】白内障手術で近視は治る?

白内障で近くが見やすくなる?

 

白内障にはさまざまな症状がありますが、白内障の種類によっては遠くは見えづらくなっても、近くが見えやすくなる白内障があります

 

この症状を近視化と言います。この近視化は白内障でも、中心部の核が白内障になる「核白内障」という種類の白内障で見られやすい症状です。核白内障は加齢に伴う白内障で多く見られる白内障として知られています。

 

この近視化の症状が出た方の中には、近くが見えるようになったので「老眼が良くなった」と思ってしまう人もいます。しかし、実際にはその後、視力が下がったり、目のかすみが強くなったりします

 

白内障とは

 

目の中にある水晶体が加齢などの原因により白く濁る病気を「白内障」と言います。60歳以降はその割合が過半数を占め、80歳以上はほぼ全員白内障であるとされています。

 

水晶体は、カメラのレンズと似た役割をしています。水晶体はピントを合わせたり、視界をきれいに映し出したりする役割があります。この水晶体は、もともと無色透明ですが、年齢とともに黄白色になり濁ってきます。

 

その結果、「物がかすんで見える」「遠くが見えづらい」などの症状が出てきます。

 

白内障ができる場所による分類

 

白内障は水晶体が濁る場所で、3つに分類することができます。水晶体は薄皮饅頭のような構造になっています。

 

水晶体のつくり

 

薄皮饅頭のあんこに当たる部分を、水晶体では核と呼びます。あんこを覆う生地に当たる部分を、水晶体では皮質と呼びます。

 

そして、薄皮饅頭の薄皮に当たる部分を、水晶体では嚢と呼びます。この核と皮質、嚢の直下はそれぞれ白く濁ることがあります。また、嚢の直下の濁りは原因によって、濁りやすい場所が違います。

 

以上から、白内障は核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障の3つに主に分類されています

 

近視とは?

 

そもそも近視とはどのような症状なのでしょうか。

 

近視とは、主に眼球の形状が前後方向に長くなることで、目に入ってきた光線が網膜の手前で焦点を結んでしまう状態です。

 

そのため近くの物体ははっきり見えますが、遠くの物体には焦点が合わず、ぼやけるといった症状が起こります。

 

正視と近視の違い

 

白内障と診断されたのに近くが見えやすくなった方は、この近視化という症状で、白内障が進行している恐れがあります。もし症状があれば担当医に伝えるようにしましょう。

 

強度近視は白内障のリスクになる

 

白内障が進行する主な原因は加齢ですが、その他にもさまざまな原因があることが知られています。その一つが強度近視です。

 

強度近視はその名の通り、近視がとても強い状態です。近視の度数で-6.0Dを超えている場合や、眼軸長(目の長さ)が26.5mm以上の場合に強度近視とされてます。この強度近視の方に白内障が多いとされています。

 

白内障手術で近視は治る?

 

白内障手術を行うと、近視を治す事ができる場合があります。先ほど説明した、核白内障によって近視化が進み、近視の状態になっている方がいます。この場合は白内障手術をすれば近視は治せます

 

もちろん、核白内障以外の白内障で近視になっていても、白内障手術をすれば近視を治す事ができる場合があります。また、眼内レンズの選び方によって、近視の症状である「遠くが見えづらい」という症状を改善することができます

 

単焦点レンズで近視を軽減する

 

単焦点レンズはピントが1か所に合うレンズです。遠くにピントが合うように設定すると、近くが見えにくくなりますが、遠くが見えるようになります。近くにピントが合うように設定すると、遠くが見えにくくなりますが、近くが見えるようになります。この場合、眼鏡を使用することで遠くも近くも見える状態にします

 

この単焦点レンズで、遠くにピントを合わせれば、近視をなくすことは可能ですが、元々高度近視の方は近視が残る場合があります。

 

多焦点眼内レンズで近視を軽減する

 

単焦点レンズとは違い、複数の距離にピントを合わせることができるレンズです。また、焦点の幅が広くなった「焦点深度拡張型」のレンズもあります。遠くから中間または遠くから近くまでと見える幅が広がるので、近視をなくすことが多くの場合でできます

 

このように、白内障手術によって近視は多くの場合治すことができるのです。しかし、無理に近視を治してしまうと逆に苦痛を感じる方もいるので、術前と見え方を変更したい場合には主治医としっかり相談することをお勧めします。

 

白内障手術後に気を付けるべきことは?

 

白内障手術後は炎症を抑え、細菌が感染しないように注意する必要があります。炎症や細菌感染は合併症の原因になるため、手術後はこれらを抑えるために目薬を使ったり、目に優しい生活を心がける必要があります。

 

手術をしたばかりの目は傷口が開きやすく、そこから細菌が入ってしまう恐れがあります。特に、手術後1週間は注意が必要です。そのため、手術をしてから1週間は頭や顔を自分で洗わないよう指導しています。また、汗をかくような運動、力を入れる作業などもしないようにしましょう。1週間が過ぎれば、シャワーを浴びたり、軽い運動をすることができます。

 

しかし、1ヶ月間は合併症が起こることがあるため、激しい運動は制限がありますし、目にゴミが入るような作業(掃除など)をする場合はゴーグルなどをして生活してもらうようにしています。このような目に優しい生活を行うことで、より合併症が出づらくなります。

 

さいごに

ここでご紹介したように、近視がある方は白内障になりやすいですし、白内障で近視の状態になることがあります。また、白内障手術を行えば近視をなくすことも可能です。このように白内障と近視は非常に密接な関係があるのです。

この記事の著者

医療法人いさな会 中京眼科

医療法人いさな会 中京眼科

愛知県名古屋市にある眼科専門クリニック。一般眼科外来のほかに、特殊手術外来(多焦点眼内レンズ)、日帰り手術(白内障、緑内障、網膜硝子体、ICL(眼内コンタクトレンズ))、ドライアイ、近視進行抑制(オルソケラトロジー)、色覚外来など、全般的な疾患に対応しております。数多くの医療機器を揃え、白内障手術だけで年間約2,000件以上(2,733件/2022年)の手術実績があります。

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