若くても白内障になる、その理由とは?

若くても白内障になる、その理由とは?

「白内障は高齢者の病気」、そう思っている方も多いのではないでしょうか?
しかし、白内障は若者も発症することがあります。今回は若者に発症する若年性白内障について、その特徴と代表的な4つの原因について解説します。

 

白内障は若くても発症する?

 

目の中にある水晶体が加齢などの原因により白く濁る病気を「白内障」と言います。水晶体はカメラのレンズと似た役割をしています。水晶体はピントを合わせたり、視界をきれいに映し出したりする役割があります。この水晶体は、もともと無色透明ですが、年齢とともに黄白色になり濁ってきます。その結果、「物がかすんで見える」「視界にモヤがかかっている」「車のヘッドライトがまぶしい」などの症状が出てきます。

 

白内障は加齢が原因となることが多いとされ、特に60歳以降はその割合が過半数を占めます。
そのため、「白内障は高齢者がなる病気だ」と思っている方が少なくありません。しかし、実は
白内障は若くても発症することがあります。

 

「白内障になりやすい人は高齢者だけじゃない?白内障の原因6選でも解説しました通り、白内障はアトピーやステロイドや糖尿病など、他の原因でも発症します。これらの原因によって、20-30歳代、あるいはそれよりも若くして白内障を発症することがあります。これを若年性白内障と呼んでいます。

 

若年性白内障の症状とは

 

若年性白内障の症状は、加齢が原因となる通常の白内障と似た症状が現れます。その進行の早さや程度に多少の違いはありますが、下記のような症状が見られます。

 

□視力が下がった

□車のヘッドライトや太陽をまぶしく感じる

□物がかすんで見える

□白い壁が黄色く見える

□眼鏡(老眼鏡)が合わなくなった

 

これらの症状のうち、1つでも当てはまる症状があれば若年性白内障の可能性があります。さらに、いくつも当てはまる場合は若年性白内障の可能性がより高くなります。

 

この症状の詳しい内容は、『白内障の見え方はこう変わる』の記事で解説しています。合わせてこちらの記事を読むと、白内障の症状について理解が深まると思います。

 

若年性白内障はなぜ発症するの?

 

加齢に伴う白内障は、60歳頃から症状が見られます。一方で、若ければ若いほど、加齢に伴う白内障を発症する可能性は低いと思われます。もちろん、明らかな原因がないにも関わらず、白内障を発症することもあります。

 

しかし、「白内障になりやすい人は高齢者だけじゃない?白内障の原因6選」の記事でも解説していますが、白内障の原因は加齢以外にもいくつかあります。

 

この記事では、若くして発症する可能性のある「糖尿病」「アトピー性皮膚炎」、誰でも薬として使用する可能性のある「ステロイド」、誰にでも起こる可能性のある「外傷」による白内障について簡単に解説します。

 

1.糖尿病による若年性白内障

 

糖尿病にはⅠ型とⅡ型があり、特にⅠ型では若くして発症してしまいます。また遺伝的にⅡ型を発症しやすい方もいます。実際、30~39歳の場合で0.7%、40~49歳の場合で1.8%と、100人いたら1人くらいは若くても糖尿病になっています。

 

糖尿病に罹患すると、そうでない方に比べ約5倍白内障になりやすくなると報告されています。特に、糖尿病のコントロールが悪い場合は、白内障の進行が早い場合があります。

 

若い年代は人間ドックなど健康診断を受けていない人もいるので、気づかないうちに糖尿病が進行していることもあります。そして、糖尿病のコントロールが悪く、白内障が進行していたという症例もあります。

 

2.ステロイドによる若年性白内障

 

ステロイドは炎症を抑える作用を期待して、さまざまな病気に対して使われます。そのため、ステロイド薬には内服薬、吸入薬、塗り薬、目薬などがありますが、白内障の原因になりやすいのは内服薬と吸入薬だとされています。

 

よって、アトピー性皮膚炎の治療のために、飲み薬でステロイド薬を長期間飲んだり、喘息で長期間ステロイド薬を吸入する際は、若年性白内障に注意が必要する必要があります。

 

3.外傷による若年性白内障

 

外傷による白内障は、目に衝撃が加わるために発症します。特に、野球やテニスボールが目にぶつかったり、目を貫通して水晶体に異物が刺さったりした場合に発症します。例えば、もともと視力が良かった少年が、試合中に野球ボールがぶつかって片目に白内障を発症して視力が低下したこともあります。この少年は手術により視力は回復しましたが、目のケガにより白内障が急に進行することもあります。

 

4.アトピー性白内障

 

アトピー性皮膚炎による白内障をアトピー性白内障と言います。アトピー皮膚炎にかかっている期間が長かったり、顔に出る症状が強かったりするほど白内障を合併する確率が高いといわれます。また、目をこすったり、叩いたりすると合併が起こりやすいともされています。

 

アトピー性皮膚炎の治療として用いられるステロイドも、白内障を悪化させる原因となります。

 

このように、加齢に伴う白内障は若くして発症することがあります。この他にも紫外線や喫煙、放射線被曝なども若年性白内障の原因となることがあります。その頻度は加齢に伴う白内障よりも稀ですが、誰でも若年性の白内障を発症することがあることが分かっていただけたと思います。

 

若年性白内障の治療

 

現在、日本で行われている白内障の治療は、目薬による治療と手術による治療です。それぞれについて簡単に解説します。 

 

1.目薬による治療

 

白内障の進行を予防するために目薬による治療を行うことがあります。「初期の白内障が見つかり、進行するのを遅らせたい」「手術をするのは怖い」などの場合に目薬を使うことがあります。しかし、白内障を治す目薬は研究段階であり、現在日本で使える目薬は、あくまで白内障の進行を遅らせる目的で使います。目薬の治療によって白内障が治るわけではないので、最終的には次の白内障手術を行う必要があります。

 

特に若年性の場合は進行が早い場合も多く、次項で解説する白内障手術から行うことが多いです。

 

2.手術治療 

 

白内障の症状が強く日常生活に支障が出ている場合、あるいは自覚症状がなくても放っておくと失明などのリスクがある場合には白内障手術によって白内障を治します。

 

白内障の手術では白目と黒目の境目に、メスで小さな傷口を作ります。そこから目に器具を入れ、水晶体を超音波で砕いて取り除きます。代わりに患者様に合わせて選んだ人工のレンズを入れて、傷口をふさいだら手術は終了です。

 

白内障の定期検査のすすめ

 

白内障は急に進行する場合もあります。また、自覚症状が出るよりも前に、白内障の白い濁りが強くなる場合もあります。特に、糖尿病やステロイドを長期間使っている場合などは、若くして白内障を発症する場合や発症後の進行が速い場合があります。ここで挙げた原因がある場合は、定期的な眼科受診を行うのが良いでしょう。

 

白内障手術をした後の生活

 

白内障手術した後も、仕事や趣味などを忙しくする方もいるでしょう。しかし、白内障手術後は感染症やレンズずれなどに注意があります。特に、手術後1週間は制限が多く、体を激しく動かしたり、頭や顔を水で洗ったりしてはいけません。1週間経てば、顔を洗ったり、軽いスポーツなど基本的な日常生活を送ることができます。しかし、手術後1ヶ月後までは、力仕事や激しいスポーツなどには制限があります。これらの制限は経過によって異なります。詳しくは主治医の指導に従い、相談するようにしてください。

 

 

さいごに

 

白内障は加齢に伴う病気のイメージが強いと思いますが、糖尿病やステロイド、目のケガなどによって若くして白内障を発症する場合もあります。
「若いから白内障はないよな」と思わず、見えづらいなど白内障の症状があれば眼科を受診するようにしましょう。

この記事の著者

医療法人いさな会 中京眼科

医療法人いさな会 中京眼科

愛知県名古屋市にある眼科専門クリニック。一般眼科外来のほかに、特殊手術外来(多焦点眼内レンズ)、日帰り手術(白内障、緑内障、網膜硝子体、ICL(眼内コンタクトレンズ))、ドライアイ、近視進行抑制(オルソケラトロジー)、色覚外来など、全般的な疾患に対応しております。数多くの医療機器を揃え、白内障手術だけで年間約2,000件以上(2,733件/2022年)の手術実績があります。

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