白内障と緑内障は合併する?それぞれの違いを徹底解説
白内障と緑内障は名前が似ていて、眼科の外来でもときどき間違えて理解している方もいらっしゃいます。
そこで、この記事では白内障と緑内障の違いを詳しく解説します。
白内障とは
目の中にある水晶体が加齢などの原因により白く濁る病気を「白内障」と言います。水晶体はカメラのレンズと似た役割をしています。水晶体はピントを合わせたり、視界をきれいに映し出したりする役割があります。この水晶体は、もともと無色透明ですが、年齢とともに黄白色になり濁ってきます。その結果、「物がかすんで見える」「視界にモヤがかかっている」「車のヘッドライトがまぶしい」などの症状が出てきます。
また、白内障は加齢が原因となることが多いとされ、特に60歳以降はその割合が過半数を占めます。そのため、「白内障は高齢者がなる病気だ」と思っている方も多いでしょう。日本では眼科病院が多いため、白内障で失明する方は多くはありません。しかし、世界では失明原因の1位で、治療せずに放っておくと失明する病気とされています。
白内障の症状
白内障は、その原因と白く濁る場所によってさまざまに分類することができます。しかし、その進行の早さや程度に多少の差はありますが、白内障で見られる症状は下記のように共通しています。
□視力が下がった
□車のヘッドライトや太陽をまぶしく感じる
□物がかすんで見える
□白い壁が黄色く見える
□眼鏡(老眼鏡)が合わなくなった
これらの症状のうち、1つでも当てはまる症状があれば白内障の可能性があります。さらに、いくつも当てはまる場合は白内障の可能性がより高くなります。これら症状は加齢に伴う白内障も、若くして発症する白内障も同じような症状が現れます。
詳しくは『白内障の見え方はこう変わる』の記事で解説しています。合わせてこちらの記事を読むと、白内障の症状について理解が深まると思います。
白内障の検査
白内障の際には視力検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などを行います。また、白内障だけが視力低下の原因と診断するためには、他に病気がないことを確認する必要があるため、これらの検査に加えて、眼底検査や光干渉断層計(OCT)、視野検査などの詳しい検査を必要に応じて行います。
白内障の治療
現在、日本で行われている白内障の治療は、目薬による治療と手術による治療です。それぞれについて簡単に解説します。
1.目薬による治療
白内障の進行を予防するために目薬による治療を行うことがあります。「初期の白内障が見つかり、進行するのを遅らせたい」「手術をするのは怖い」などの場合に目薬を使うことがあります。しかし、白内障を治す目薬は研究段階であり、現在日本で使える目薬は、あくまで白内障の進行を遅らせる目的で使います。目薬の治療によって白内障が治るわけではないので、最終的には次の白内障手術を行う必要があります。
2.手術治療
白内障の症状が強く日常生活に支障が出ている場合、あるいは自覚症状がなくても放っておくと失明などのリスクがある場合には手術によって白内障を治します。
白内障の手術では白目と黒目の境目に、メスで小さな傷口を作ります。そこから目に器具を入れ、水晶体を超音波で砕いて取り除きます。代わりに患者様に合わせて選んだ人工のレンズを入れて、傷口をふさいだら手術は終了です。
緑内障とは
「緑内障=失明」と思う人もいらっしゃいます。たしかに緑内障は常に失明原因の上位ですが、早期発見・早期治療で進行を抑えることが期待できる病気です。
そんな緑内障は、視神経と視野に特徴的な変化があり、眼圧を十分に下げることで視力や視野の進行を改善、あるいは抑えることのできる目の病気とされています。
2000年-2002年に日本で行われた調査で、40歳以上の日本人20人に1人が緑内障と診断されました。そして、緑内障は年齢とともにその割合は増えていきます。
緑内障の症状
初期の緑内障では、自覚する症状はほとんどありません。最初に自覚する症状として、視野が狭くなったり、視野の一部が欠けてくることがあります。しかし、緑内障は少しずつ進行するため、これらの症状に気付くのはかなり進行するまで難しいでしょう。そして、最終的には視野が大きく欠けてきたり、視力が出づらくなったりしてしまうのです。
緑内障の検査
緑内障の診断のためにはいくつかの検査を行います。視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査に加えて、緑内障の場合はさらに眼底検査、光干渉断層計(OCT)、隅角検査、視野検査などさまざまな検査を追加で行います。
緑内障の治療
緑内障の治療で科学的根拠のある方法は、眼圧を下げることです。たとえ眼圧が正常範囲内であっても、眼圧を下げることが望ましいとされています。
眼圧を下げる方法は目薬やレーザー、手術などがあり、どの治療を選ぶかは緑内障の種類や進行の具合などによって異なります。それぞれの治療の効果、副作用、良い点、悪い点がありますので、その判断は患者さんごとに異なります。
現時点では、緑内障を完治させる方法はなく、進行を抑えることが緑内障の治療とされています。最近は侵襲が少ない緑内障手術を行う施設も増えており、緑内障手術を行う方も増えています。
白内障と緑内障の違い
白内障と緑内障についてそれぞれ説明しましたが、違いはお分かりいただけたでしょうか。
以下はそれぞれの違いのポイントです。
- 白内障は加齢によって皆さんに起こりえますが、緑内障は加齢によって増えても全員に起こる病気ではない。
- 白内障は白くぼやけて見えづらくなることが多く、緑内障は視野が欠けて見える範囲が狭くなる。
- 白内障は失明の原因とはなりづらいが、緑内障は失明の原因の常に上位である。
- 白内障は手術によって治ることが多いが、緑内障の治療はあくまで進行を抑える目的で行う。
また、白内障と緑内障は合併することもあります。高齢になればなるほど、緑内障に白内障を合併する人は増えます。
この場合は白内障手術に加えて、緑内障手術を同時に行うことがあります。
白内障と緑内障は予防できる?
残念ながら白内障も、緑内障も推奨されている予防方法はありません。しかし、健康的な食生活、適度な運動を行うことは非常に重要です。また、眼科を定期的に受診することで、早期発見・早期治療をすることができます。40歳以降にこれらの病気は見られやすくなるため、40歳以上の方は定期的な眼科受診をおすすめします。
さいごに
白内障と緑内障はその名前が似ているため、間違って覚えていた人もいるでしょう。少しの名前の違いですが、その症状や治療は大きく異なります。
この記事を読んで正しく理解していただくと同時に、白内障と緑内障の早期発見と治療のため、眼科受診をしていただければと思います。