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ライトアジャスタブルレンズ(Light Adjustable Lens)について

ライトアジャスタブルレンズ(Light Adjustable Lens)について

白内障手術をお考えの方は、ライトアジャスタブルレンズ(Light Adjustable Lens:通称LAL)という眼内レンズをご存知でしょうか?


白内障手術では、ご自身の水晶体の代わりに、人工の眼内レンズを入れます。この人工の眼内レンズは、全てのものにピントを合わせられるわけではありませんので、生活する中で一番見ている距離、見たい距離を考えることが重要となります。

 

しかし、このピントの位置をどこにするか悩む方も少なくありません。また、手術を終えると、事前に決めておいたピントの位置と手術後に合ったピントの位置がズレてしまうことがあります。

 

LALは白内障手術をした後にピントを決める画期的な眼内レンズで、このような悩みが解消されます。そこで、この記事ではLALについて詳しく解説します。

 

ライトアジャスタブルレンズ(Light Adjustable Lens)とは

 

白内障手術をする前に、ピントを合わせる位置を迷う方は少なくありません。従来の白内障手術で用いる眼内レンズには、単焦点眼内レンズや多焦点眼内レンズなどがありますが、いずれも白内障手術をする前にピントを合わせる位置を決めておきます。その種類が多いため、位置合わせに悩まれる方もいらっしゃいます。

 

また、このピントの位置はあくまで手術前の検査結果から計算した予想値であるため、手術後にある程度の誤差が生じることがあります。その結果「想像していた見え方と違う」と不満を抱く方もいらっしゃいます。

 

その一方で、ライトアジャスタブルレンズ(Light Adjustable Lens:通称LAL)は、白内障手術をした後に患者さんが希望する見え方になるように度数を変えることができる眼内レンズです。

LALレンズ

 

LALを使った手術は通常の白内障手術と同じですが、術後に眼の状態が落ち着いてから、紫外線を眼内レンズに照射します。照射後、眼内でレンズの形がゆっくり変わることによりピントの位置が調整されます。合わせたピントの位置で少しの間生活していただき、その見え方が自分の生活に合っているかどうかを確認することができます。

 

ピントの位置が合っていなければ、再度、紫外線を当てて、ピントの位置を再調整します。ピントの位置が合っていれば、ピントの位置を固定するための紫外線照射を行います。このように、LALは紫外線を何度か照射して、患者さんにとって理想的なピントの位置に合わせていきます。

 

LALは安全なのか?

 

LALは最近登場した眼内レンズと思われている方も多いですが、実は2003年に報告があるほど歴史が古い眼内レンズです。

 

そのため、使用されている方も一定数いて、600人の被験者を対象としたFDA(アメリカ食品医薬品局)の研究では、LALを使用した被験者は、標準的な単焦点眼内レンズを使用した方よりもより長期間、眼鏡なしで1.0の視力を達成しています。

 

参照記事:SUMMARY OF SAFETY AND EFFECTIVENESS DATA (SSED)

 

このように、LALは意外と歴史が古く、単焦点眼内レンズよりも裸眼視力における成績が良いなどの報告もあります。

 

しかし、日本ではまだ未承認であるため自由診療であること、また、病院側の費用負担が多いこともあって、未だに普及はしていません。

 

LALの特徴

 

ここでは、LALの特徴をメリット・デメリットに分けて解説します。

 

LALのメリット①手術後にピントの位置を変えられる

 

LALの最大の特徴は、手術後にピントの位置を変えることができる点です。白内障手術前にピントの合う位置を決めることができなくても、手術後に実際にピントの合う位置を確認しながら最適な位置に合わせることができます。

 

また、これを活かして、モノビジョン法を行うことがあります。モノビジョン法は、単焦点眼内レンズを使って、右目と左目で度数を変えて、両目で見た時の焦点距離を広げる方法です。この方法は海外では割と行われていますが、日本で行っている施設は多くありません。理由としては、見え方の想像がしづらいことが挙げられます。

 

しかし、LALを用いれば、ピントの合う位置を調節できるため、見え方を確認しながらこのモノビジョン法を行うことができます。

 

LALのメリット②乱視を減らすことができる

 

通常の眼内レンズの場合は、手術前に乱視を調整するための度数を決定します。これもピントの位置と同じで、乱視の度数ズレが起こることがあります。しかし、LALでは可能な範囲はありますが、乱視の度数を手術後に調整ができます。

 

LALのメリットの注意点

 

ここまでの文章を読んで、「LALにすれば何度でも度数を変えられる」と思う方がいます。それは大きな誤解です。LALでは度数を固定したら、それ以降は度数変更はできませんので注意が必要です。また通常固定する前に2〜3回の範囲で度数変更が可能です。その間に最適な位置を決める必要があります。

 

LALのデメリット

 

LALは固定する前に紫外線を浴びるとレンズの形状が変形することがあり、その場合はピントの合う位置が変わり、見えづらさの原因になることがあります。眼内レンズの度数に影響が出ないようにするため、術後から眼内レンズの度数を固定するまでの約1〜2ヶ月間は専用のUVカット眼鏡をかける必要があります。

 

また、通常の術後検診のほかにも、紫外線照射のために通院していただく必要があります。この通院は眼内レンズのピント調整に必要です。そのため、他の眼内レンズを使う方よりも通院する日数を確保していただく必要があります。

 

おわりに

 

LALは手術後にピントを合わせる事ができる画期的な眼内レンズです。しかし、紫外線予防の眼鏡が必要で、通院日数を確保していただく必要もあります。

 

日常生活に多少の制限が出てしまいますが、白内障手術後の見え方の不満を少なくするために有用な眼内レンズです。「少しでも理想的な見え方に近付けたい」という方はご検討ください。

この記事の著者

市川 慶 医師

市川 慶 医師

2008年愛知医科大学医学部卒業。2008年4月より社会保険中京病院にて勤務を開始する。2010年より中京病院の眼科を担当。2016年、Best of JSCRS(Cataract)受賞。2019年7月より総合青山病院にて眼科部長に就任。専門領域は白内障手術、眼形成。レーザー白内障手術、日帰り白内障手術執刀医として第一線で活躍している。

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