ファインビジョンについて

ファインビジョンについて

この記事を読んでいるということは、「白内障手術を検討していて、目に入れる眼内レンズは多焦点眼内レンズにしよう」と思っている方もいるでしょう。

 

しかし、多焦点眼内レンズはその種類も多く、焦点深度拡張型(以下、EDOF)レンズや2焦点、3焦点、5焦点などがあり、どれを選べば良いのか迷ってしまう方もいます。

 

そこで、この記事ではファインビジョンという眼内レンズについて詳しく解説します。この記事を読めばファインビジョンの原理、特徴、適応などについて分かります。

 

多焦点眼内レンズについて簡単におさらい

 

ファインビジョンは多焦点眼内レンズの1つで、ファインビジョンを理解するためには多焦点眼内レンズについて知っておく必要があります。

 

多焦点眼内レンズはピントの合う位置が複数あります。そのため、白内障手術後は眼鏡を使うことが少なくなり、裸眼で家事や仕事、趣味を行うことができるとされています。

 

現在国内では、多焦点眼内レンズのピントの合う位置は2つ(2焦点眼内レンズ)から5つ(5焦点眼内レンズ)、EDOFレンズの眼内レンズが用いられています。

多焦点眼内レンズ一覧

 

ファインビジョンとは

 

ファインビジョンは、ベルギーのPhysIOL社が2011年に発売を開始した多焦点眼内レンズです。

ファインビジョンのレンズ

ファインビジョン

 

ファインビジョンは、2重焦点レンズのうち、「近くと遠く」「中間と遠く」にピントが合う2種類のレンズを組み合わせた、二重構造のレンズとなっています。この構造により、ファインビジョンは近く・中間・遠くの3点で焦点が合うようになります。


国内臨床試験では、ファインビジョンは−3.0Dから+0.5Dまで小数視力1.0以上の良好な視力が得られたという結果が出ております。

ファインビジョンHPの焦点深度曲線

参照元:ファインビジョン HP

 

ファインビジョンのメリット

 

眼鏡を使う頻度を大幅に下げることができる

 

ファインビジョンのメリットの1つは、白内障手術後に眼鏡無しで生活できる場面が増えることです。単焦点眼内レンズはピントの合う位置が1つであるため、近くにピント合わせれば遠くを見るための眼鏡が必要なことが多いです。

 

逆に、遠くにピントを合わせれば近くを見るためには眼鏡が必要なことが多いです。

 

一方で、ファインビジョンはピントの合う位置が大きく3箇所あり、特に、他の眼内レンズに比べて中間距離が見やすいとされています。近くや遠く、さらに中間部にもピントを合わせることができるため、日常生活で眼鏡を使う可能性を大きく下げるとされています。

 

もちろん、ファインビジョンでも眼鏡を使っている方はいますが、単焦点眼内レンズや他の多焦点眼内レンズよりもその確率は大きく下がることが予想されます。

術後の眼鏡装用率

参照元:ファインビジョン HP

 

ファインビジョンのデメリット

 

ファインビジョンのデメリットは多くありませんが、代表的なものに暗所のハロー・グレア現象があります。ハローとは光のまわりに輪っかのように光が見え、グレアは光が花火のように散って見える現象です。

 

このファインビジョンにはハローとグレアの症状を軽減するため、「full diffractive」と「convolution」という設計が採用されています。これは、光学面全体に回折構造があり、回折溝のエッジで発生する光エネルギーの分散を抑制することで、ハローとグレアの症状を軽減するとされています。

 

しかし、単焦点レンズに比べて、ハローとグレアの症状は出やすいことが予想されるため、職業や趣味が運転で、特に夜間の運転が多い方は、ファインビジョンを選ぶ際はよく検討されると良いでしょう。

 

乱視がある方で、ファインビジョンを希望される方の注意点

 

白内障手術をしたのにもかかわらず、手術後に見えづらさを訴える方がいます。その1つが乱視によるボヤけなどの症状です。乱視は角膜や水晶体などによって生じる像のゆがみで、物が縦や横に二重に見えることがあります。

 

この乱視の症状は白内障手術後に改善する場合もありますが、角膜による乱視であれば改善は難しいです。改善しない場合は眼鏡やコンタクトレンズで乱視矯正が必要です。ただし、多焦点眼内レンズの場合は、眼鏡無しの生活を希望される方が多いので、満足した結果が得られないことになります。

 

しかし、ファインビジョンは乱視用のレンズが販売されています。そのため、手術前に乱視があることが分かっていれば、この乱視用のファインビジョンを用いて、乱視を矯正することができます。

 

ただし、2023年8月時点ではこの乱視用レンズを選ぶと、自由診療扱いになってしまいます。そのため、選定療養が使えず、手術代などに保険が適応できなくなってしまいますので、その点はご注意ください。

 

ファインビジョンが向いている方

 

ファインビジョンは中間やその近方の見え方を強化しているため、日常生活で手元の作業中心の方には良い適応です。この他にも、ファインビジョンが適している方はいますし、上記に当てはまっても適応にならない方もいます。

 

細かな適応については手術前に詳しい検査をしますので、主治医に確認するのが良いでしょう。

 

おわりに

 

多焦点眼内レンズにはさまざまな種類があり、その特徴もさまざまです。この記事ではファインビジョンについて取り上げましたが、他の多焦点眼内レンズについても解説しています。記事を読み比べていただき、多焦点眼内レンズの理解を深めていただければと思います。

 

しかし、書いている内容はあくまで一般論ですから、本当に患者さんの目に合っているかは検査をして確認する必要があります。詳しくは眼科医を受診して、自分に合った多焦点眼内レンズを選ぶようにしてください。

この記事の著者

市川 慶 医師

市川 慶 医師

2008年愛知医科大学医学部卒業。2008年4月より社会保険中京病院にて勤務を開始する。2010年より中京病院の眼科を担当。2016年、Best of JSCRS(Cataract)受賞。2019年7月より総合青山病院にて眼科部長に就任。専門領域は白内障手術、眼形成。レーザー白内障手術、日帰り白内障手術執刀医として第一線で活躍している。

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