子供の近視抑制

文部科学省の学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0 未満の者の割合はおおむね増加傾向にあり、若年化が進んでいます。

裸眼視力1.0未満の者の割合
幼稚園 小学校 中学校 高等学校
平成20年 28.93% 29.87% 52.60% 57.98%
平成25年 24.53% 30.52% 52.79% 65.84%
平成30年 26.68% 34.10% 56.04% 67.23%
令和2年 27.90% 37.52% 58.29% 63.17%

参考文献:文部科学省「学校保健統計調査」

子供の近視

近視の多くは学童期に発症し、小学4~5年生にかけて進行が著しく、20代くらいまでで進行が止まることが多いと言われています。また、発症年齢が早いほど、将来より強い近視になる傾向があります。よって、早いうちからの対策がとても重要になります。

近視の要因には遺伝的要因と環境要因があります。遺伝的要因は受け継いだ遺伝子によるものです。親が近視であると子どもの近視になる可能性が比較的高くなると言われているのはこちらに関係しています。環境要因は近年のパソコンやタブレット、スマートフォンなどの普及により近くを見る機会や時間が多いこと、それに伴い野外で遊ぶことが少なくなり太陽光に当たる時間が減ったことで近視になりやすくなると言われています。

目の仕組みと近視

目に入ってきた光は、角膜と水晶体を通り屈折して、網膜に像が映し出されます。目はピントを合わせるために、毛様体により水晶体の厚さを調節しています。また、虹彩により光の量も加減されます。

図のように、網膜に写る像は上下左右がさかさまになります。脳がさかさまになった像を正常とみなすので、正しい方向で見えるように感じます。

近視の多くは「眼軸長(がんじくちょう)」と呼ばれる目の奥行きの長さが伸びすぎて、網膜にピントが合わなくなることが原因です。そのため、眼鏡やコンタクトを使うことで光の屈折が矯正されて、網膜にピントが合い正常に見えるようになります。

近視の予防策

一度近視が進んでしまうと戻ることはありません。そのため、原因となる眼軸長の伸びを抑えることが近視の進行を抑制するために重要となります。

対策 1生活習慣の改善
勉強や近距離での作業、テレビやパソコン、スマートフォンを長時間見続けることで毛様体筋が緊張したままになり、近視が進行しやすくなってしまいます。近業(目と近い距離で作業する行動)などで長時間じっと見続けることは避け、1時間に10~15分程度の休憩をとるなどして適度に目を休めましょう。
対策 2野外活動
太陽光に含まれるバイオレットライトを浴びることで、近視を抑制するとされる遺伝子が活性化するという研究結果が報告されています。そのため1日2時間を目安に野外活動を行い、太陽光を浴びることが推奨されています。しかし、すでに近視になってしまった子供の近視進行を遅らせる効果はないと言われていますので、早いうちから太陽光を浴びる習慣をつけましょう。
対策 3目にあった眼鏡を使う
以前は初めての眼鏡など弱めに合わせる事が多かったのですが、最近では遠くが良く見えるように度数を合わせることで近視を進みづらくさせることができると言われています。また、眼鏡をかけることで近視が進むことがあると思われる方もいらっしゃいますが、眼鏡をかけずに網膜にピントが合っていない状態だと、ピントを合わせようとして眼軸が伸び、かえって近視になりやすくなります。お子様の場合、成長にともなって度数も変化しやすく、毎年のようにレンズや眼鏡枠を交換しなければならない場合も少なくありませんので定期的な検診をお勧めします。
対策 4低濃度アトロピン点眼の使用
低濃度アトロピン点眼とは、子供の近視の進行軽減を目的にアトロピンを0.01%配合させて作られた点眼薬です。超低濃度のアトロピンを点眼することにより、副作用を抑えつつ、近視の進行を遅らせる(眼軸長の進展を抑制する)効果がある、ということが近年の研究によってわかってきました。

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対策 5オルソケラトロジー
オルソケラトロジーとは、寝るときに特殊なハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を変化させることで近視や乱視を矯正する方法です。オルソケラトロジーによる矯正により、眼球の周辺部のピントのずれも改善されるので近視の進行がより抑制されると考えられています。レンズをつけるのは就寝中のみで、日中は裸眼で生活することができます。お子様をはじめとして、幅広い年齢層に対応可能な方法です。また、オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼液との併用療法はとても効果的な近視抑制治療である、と自治医科大学の2020年の論文で明らかになりました。

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