低濃度アトロピン点眼

近視がもたらす眼疾患

近視の程度は軽度近視(-3.00D(ジオプトリー)未満)、中等度近視(-3.00D ~ -6.00D未満)、強度近視(-6.00D以上)に分けられます。強度近視になると近視性黄斑変性症や網膜剥離など、他の疾患にかかりやすくなります。

アトロピンと低濃度アトロピン

アトロピン点眼液は、ピント合わせを担う毛様体筋の動きを一時的に麻痺させ、瞳孔を拡大する作用を持ちます。従来は斜視や弱視の診断・治療に用いられてきましたが、近視進行を抑制する効果も古くから知られていました。しかし、通常濃度(1%)ではまぶしさや近方視のぼやけなどの副作用が強く、長期的な治療には向いていませんでした。
2012年、シンガポール国立大学の研究グループが、0.01%という低濃度アトロピンでも近視の進行を有意に抑制できることを発表しました※1
さらに、2016年には日本の7大学による多施設共同研究でも、低濃度アトロピン点眼液(0.01%)の有効性が報告されました※2
この研究では、点眼を行わなかった群と比較して、平均で約50%の近視進行抑制効果が確認されています。副作用も極めて軽微であり、長期使用が可能であることが示唆されています。

※1:Chia A, Lu QS, Tan D. "Five-year clinical trial on atropine for the treatment of myopia
2:myopia control with atropine 0.01% eyedrops." Ophthalmology. 2012;119(2):347-54.

※2:多施設共同研究(J-ATOM study)として、旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、京都府立医科大学、慶應義塾大学、筑波大学、日本医科大学が参加。日本国内の臨床研究に基づいた製剤を、当院でも使用しています。

アトロピンと低濃度アトロピン

低濃度アトロピン点眼による
近視抑制治療法

適応・治療対象

  • 年齢:小学生以上
    18歳以下

  • 屈折:中程度(-6.0D)以下の
    近視

※視力低下をきたす他の眼疾患がないこと

検査・診察スケジュール

検査内容 料金
初回(点眼開始時) 視力・屈折・眼軸長 5,500円(税込)
1ヶ月後 視力・屈折 5,500円(税込)
3ヶ月後 視力・屈折 5,500円(税込)
6ヶ月後 視力・屈折・眼軸長 5,500円(税込)
9ヶ月後 視力・屈折 5,500円(税込)
12ヶ月後 視力・屈折・眼軸長 5,500円(税込)
  • ※定期検査以外でも、症状があれば点眼の使用を中止し早めに受診して下さい。
  • ※低濃度アトロピン治療に関わる検査、投薬はすべて保険適応外(自費診療)となります。
  • ※3ヶ月後以降は、3か月おきに来院いただきます。
検査スケジュール
注意点

・本治療は近視を回復させるものではなく、将来なりうる近視の進行をできるだけ遅らせることを目的としたもので、必ずしも効果が出るものではありません。

使用する点眼薬について

使用する点眼薬は、**参天製薬の「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」**であり、1日1回、就寝前に点眼することで近視の進行を抑えることを目指す治療法です。
本剤は、参天製薬とシンガポール国立眼科・視覚研究所(Singapore Eye Research Institute)との共同開発により誕生し、2024年12月に厚生労働省より製造販売承認を受けた、日本で初めて近視進行抑制を適応とした低濃度アトロピン点眼液です。防腐剤フリーの一回使い切りのタイプです。
費用 : 4,380円(税込) 【30本分 / 約1か月分】

点眼薬による副作用

  • 眩しく感じたり、かすんで見える

    点眼後、瞳孔が大きくなる(開く)ことがあります。瞳孔が大きくなるとピントが合わせにくくなり、まぶしく見えたり、一時的に目がかすんだりすることがありますので、必ず就寝前に点眼するようにしてください。就寝前に点眼しても、翌日まで眩しくみえることがあります。

    これらの症状、その他にも何らかの異常が現れた場合には、直ちに医師にご相談ください。

治療効果を高めるために

日本で行われた研究で、オルソケラトロジー治療との併用療法が、近視進行抑制に相乗効果があるとの報告があります。興味のある方は、医師やスタッフにお声がけください。

オルソケラトロジーとは
オルソケラトロジーとは、近視及び近視性乱視の方が寝る時にレンズを装用することで、角膜の形状を変化させる世界で注目されている視力矯正法です。変化した角膜形状は一定期間維持されるため、就寝時のレンズ装用により、日中は裸眼で過ごせることが最大のメリットです。 ※適応検査は保険診療ですが、治療は自費診療となります。

オルソケラトロジーの詳細はこちらから