ICL手術
2023.10.30
ICL(眼内コンタクトレンズ)の全て: メリット・デメリット、費用からリスクまで
この記事では、視力矯正手術の一つであるICL(眼内コンタクトレンズ)手術について、その全てを詳しく解説します。ICLとはImplantable Contact Lensの略で、眼内の虹彩と水晶体の間に人工レンズを挿入する手術です。視力回復率が高く、安定した視力が得られるというメリットがあります。
しかし、一方で費用が高く、保険適用外であるなどのデメリットも存在します。この記事では、ICL手術のメリットとデメリット、手術の費用と保険適用について、さらにはリスクとその対策、他の視力矯正手術との比較についても詳しく説明します。
ICL(眼内コンタクトレンズ)とは
ICL手術とは、近視や乱視などの視力矯正手術の一種です。目の中に人工の眼内レンズを入れることで、視力を回復させる方法です。ICL手術にはどのような特徴やメリットがあるのでしょうか。また、どんな人に向いているのでしょうか。この記事では、ICL手術について詳しく解説します。
ICL手術では眼内の水晶体の前に人工の眼内レンズを挿入する
ICL手術では、眼内の虹彩と水晶体の間に眼内レンズを挿入します。水晶体とは、目の中央部にある透明な組織で、ピント調節を行う役割があります。眼軸長と呼ばれる眼の長さが長くなることで水晶体で十分にピントを合わせる事が出来なくなる事があります。これが近視の原因の一つです。ICL手術では、水晶体を取り除くことなく、その前方に眼内レンズを入れることで、視力を矯正します。
ICL手術のメリットとデメリット
ICL手術には、多くのメリットがありますが、デメリットやリスクも無視できません。ICL手術を受ける前に、メリットとデメリットをしっかり理解しておくことが大切です。
ICL手術のメリット①:視力回復率が高く、安定した視力が得られる
ICL手術のメリットのひとつとして、角膜の形状を殆ど変えないことが挙げられます。ICL手術では、-20.0Dまでの近視や約-6.0Dまでの乱視に対応できます。また、角膜屈折手術(レーシックやPRKなど)では対応できない高度近視や薄い角膜でも可能です。ICL手術後は、通常2、3日程度で視力が回復し、安定した視力が得られます。多くの場合、裸眼で1.0以上の視力が得られると言われています。
ICL手術のメリット②:角膜の形状を変えないため、ドライアイのリスクが低い
ICL手術の2つ目のメリットは、角膜にダメージを与えないことです。角膜屈折手術では、角膜の表面や内部を削るか切るかする必要があります。これにより、角膜の感覚の低下や形状の不安定化をきたし、ドライアイになる可能性があります。しかし、ICL手術では、白内障手術同様に角膜の一部を切開し、水晶体の前方にレンズを入れるだけなので、角膜の形状は殆ど変化しません。そのため、ドライアイのリスクが低いと言われています。
ICL手術のメリット③:レンズの交換や取り出しが可能なため、将来的な視力の変化にも対応できる
ICL手術のもう一つのメリットは、レンズの交換や取り出しが可能なことです。ICL手術では、眼内の虹彩と水晶体の間に眼内レンズを挿入します。そのため、将来的に視力が変化したり、老眼になったりした場合でも、レンズを交換したり取り出したりすることで対応できます。また、レンズの種類や度数も選べるため、自分に合ったレンズを選ぶことができます。
ICLのデメリット①:ハロー・グレアが起き、夜間に見えづらく感じる場合がある
特に問題とされるのが「ハロー・グレア」と呼ばれる現象です。ハローは、明るい光源を見たときに、その周囲に光の輪が見える現象を指します。グレアは、光がぎらついてまぶしく感じることです。具体的には、夜間に車のヘッドライトや街灯を見ると、その光源の周りに「ハロー」が現れることがあります。この現象は、レンズ内の光の屈折や反射が不均一であることが原因とされています。
ICLのデメリット②:費用が高く、保険適用外である
ICL手術の最大のデメリットは、費用が高いことです。ICL手術は保険適用外であり、自由診療です。そのため、費用は病院やレンズの種類によって異なりますが、一般的には両目で40〜80万円程度かかると言われています。
しかし、一般的な1dayのコンタクトレンズと比較すると長期的な目線で見れば総額はICLの方が安くなる場合が多いです。仮に、1dayレンズを月額5,000円とした場合、年間60,000円程度かかります。それを15年継続した場合、総支払額は900,000円となりICLの費用よりも高くなります。
ただし、ICLの場合は一時的に払う金額が大きくなるためその部分が負担となりデメリットと感じる方もいるのが現状です。
ICLのデメリット③:合併症の可能性がある
ICL手術は安全性が高い手術ですが、全くリスクがないというわけではありません。ICL手術に伴って、以下のような合併症が発生する可能性があります。
- ・眼圧上昇
- ・感染症
- ・白内障
- ・角膜内皮細胞減少
- ・レンズのズレや脱落
- ・眼球内出血
- ・視力低下や失明
これらの合併症は非常にまれであり、適切な診断や手術技術、アフターケアによって予防や治療が可能です。しかし、万一の場合に備えて、手術前には医師としっかりと相談し、リスクとメリットを理解した上で手術を受けることが重要です。
ICL手術の費用と保険適用について
ICL手術は保険適用外の自由診療です。そのため、費用は医療機関や使用するレンズの種類などによって異なります。また、保険適用される国や地域もあります。ICL手術の費用や保険適用については以下の通りです。
ICL手術の費用
一般的には、両眼で約40万円から80万円程度が相場と言われています。ICL手術は高額な費用がかかるため、事前に見積もりを取り、自己負担額を確認することが必要です。
ICL手術の保険適用について
ICL手術は現在、日本では保険適用外です。しかし、海外では一部の国の民間保険が適用される場合があります。例えば、アメリカではFDA(食品医薬品局)がICLを認可・承認しています。また、欧州ではCEマーク(欧州共同体対応マーク)を取得しており、医療機器として認められています。
ICLのリスクと対策
ICL手術には稀に合併症が発生するリスクがあります。その中でも特に気を付けるべきリスクは眼圧上昇と角膜内皮細胞減少です。これらのリスクを最小限に抑えるためには、適切な診断と選択、手術技術、定期的な検査とアフターケアが必要です。
ICL手術におけるリスク
ICL手術におけるリスクの一つに眼圧上昇があります。眼圧上昇はレンズが眼内に挿入されることで、術後一過性に眼の中の液体(房水)の流れが妨げられることで起こります。眼圧上昇は目の神経や血管を圧迫し、視力低下を引き起こす危険性があるため、緑内障の傾向がある方は手術を慎重に考える必要があります。
角膜内皮細胞減少はレンズが角膜に接触することで、角膜の表面を覆う細胞が傷ついたり、死んだりすることで起こります。角膜内皮細胞減少は角膜の透明度や厚みを低下させ、視力低下を引き起こす危険性があります。もともと角膜内皮細胞が少ない方の手術は難しくなります。
リスクを最小限に抑えるための対策
適切な診断と選択とは、手術前に眼の状態や視力、病歴などを詳しく調べ、ICL手術が適切かどうかを判断することです。その際に、使用するレンズの種類やサイズを正しく選ぶ必要があります。また、手術中にレンズの位置や角度を正しく調整することが重要になってきます。さらに、医療機関によっては笑気麻酔などを用いたり手術中に声掛けをする事で患者さんの手術中のストレスを最小限にするよう心がけています。
定期的な検査とアフターケアとは、手術後に眼圧や角膜内皮細胞数などを定期的にチェックし、異常があれば早期に対処することです。また、目の乾燥や感染を防ぐために目薬や抗生物質などを使用することも、アフターケアの一つです。
ICL手術と他の視力矯正手術との比較
ICL手術と他の視力矯正手術と比較すると、それぞれにメリットやデメリットがあります。ICL手術は角膜の形状を殆ど変えないため、ドライアイや夜間視力低下のリスクが低く、レンズの交換や取り出しが可能なため、将来的な視力の変化にも対応できます。しかし費用が高く、他の視力矯正手術よりも、手術時間も長くなりがちです。
ICL手術と他の視力矯正手術との比較については以下のように説明します。
ICLとレーシックとの違い
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術とレーシックは、どちらも視力矯正手術の一種ですが、その手法と適応範囲には大きな違いがあります。レーシックは、レーザーを照射して角膜の一部を切除する事で角膜の形状を変え、視力を矯正する手術です。一方、ICL手術は、眼の虹彩と水晶体の間にレンズを挿入することで視力を矯正します。そのため、角膜が薄い人や軽度のドライアイの人でもICL手術を受けることが可能です。
また、レーシックは角膜を永久に変形させるため、一度手術を行うと元に戻すことはできません。しかし、ICL手術はレンズを取り出すことで元の見え方に戻すことが可能です。これらの違いから、自身の眼の状態や生活習慣により、適した手術方法は異なります。
ICL手術と白内障手術との違い
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術と白内障手術は、どちらも眼内レンズを使用する点では同じですが、その目的と手術の内容には大きな違いがあります。白内障手術は、白内障により濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入する手術です。これに対して、ICL手術は視力矯正のために眼内レンズを虹彩と水晶体の間に挿入する手術で、水晶体はそのまま残します。
また、白内障手術後は水晶体のピント調節能力が失われますが、ICL手術では自身の水晶体を残すため、ピント調節能力を保つことが可能です。これらの違いから、両者は異なる症状や目的に対して適用されます。
ICLについてよくある質問
ここでは、ICL手術についてのよくある質問とその回答を解説いたします。
ICL手術後の維持費はいくらですか?
ICL手術後は、定期的に眼科医の診察を受ける必要があります。診察では、眼圧や視力、角膜や眼底の状態などをチェックします。診察費の負担はクリニックによって異なります。当院の場合は、術後検査費に3カ月検診までの診療費や3年間のレンズの交換代などが含まれています。
また、ICL手術後は点眼薬を使用することが多くなります。点眼薬もクリニックによっては手術費用に含まれていない場合があるので確認する必要があります。当院では、保証期間内であれば追加で費用はかかりません。具体的な維持費についてはそれぞれのクリニックに確認するのがいいでしょう。
ICL手術で入れたレンズはズレますか?
ICL手術で入れたレンズは、通常は激しくぶつかったりしない限りズレることはありません。レンズは虹彩と水晶体の間に挿入されるため、目を動かしてもレンズが動くことはありませんが、まれにレンズサイズの不適合や乱視用レンズの位置ずれ、眼圧の変化や外傷などが考えられます。その場合は再度手術でズレを修正することもあります。
老眼用のICLはありますか?
老眼用のICLは、まだ日本では一般的ではありません。しかし、当院では「老視矯正用ICL」も取り扱っています。老視矯正用ICLは一般的なICLと比べて広い範囲でピントを合わせることが出来る老眼向けのレンズです。このレンズはヨーロッパで承認を受けており、老眼かつ近視にも効果的です。
ぜひ合わせて「老視矯正用ICL」のページもご覧ください。
まとめ
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、視力回復率が高く、安定した視力が得られるというメリットがありますが、一方で費用が高く、保険適用外であるなどのデメリットもあります。また、手術には一定のリスクが伴いますが、適切な対策を講じることでこれらのリスクは最小限に抑えることが可能です。
ICL手術はその独自の特性と利点を持っています。しかし、手術を受ける前には、自身の目の状態や生活習慣、経済状況などを考慮し、最適な視力矯正手術を選ぶことが大切です。本記事を参考に、ICL手術を検討する際のポイントを押さえてください。
また、中京眼科のICL特設ページはこちらからご覧いただけます。